欠格事由がなければ誰でも後見人になれるのかというとそうではありません。次のケースで説明しましょう。
認知症のお父様のために成年後見の制度を利用しようとした息子のAさんは、自らが後見人となるべく家庭裁判所に申立てを行いました。お母様もそれに賛成でした。
ところが、弟のBさんはこの申立てには賛成していませんでした。「親父の財産を兄貴が勝手に処分するのではないか」と危惧していたのです。
後見人の選任の際は、推定相続人(これから後見開始になる父上が亡くなった場合に相続人となるべき人。本ケースでいえばお母様とBさんです)の意向調査が裁判所によってなされます。
ここでBさんの意向が「兄のAが後見人になるのは納得できない」というものであれば、裁判所は紛争の火種を回避するべく全く関係のない第三者(弁護士や司法書士など。専門職後見人と呼ばれることもあります)を後見人に選任します。
なお、裁判所の選任した後見人を申立人が気に入らないからといって、別の人へ変更してもらえることはありません。後見人として誰が適任かは裁判所が決めることだからです。
※ただし、「任意後見制度」という、2000年(平成12年)に新しくできた種類の後見制度を利用する場合は別です。自分の選んだ人を予め後見人候補者とすることができます(もちろん、選ばれた人の承諾が必要です)。
ちなみに、「任意」ということばは「法定」ということばの対概念です。この稿で言及した後見制度は、「法定」後見制度です。