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Q & A認知症と高齢者~母の預金はどうなるのでしょうか

お知らせ

88歳の母は現在認知症で介護施設に入居しています。
わずか1時間前あったことや約束したことは完璧に忘れてしまいますし、今日や昨日といったカレンダーの感覚もごちゃごちゃです。急に怒り出したり、逆に鬱状態になったりすることもしばしばです。
施設利用料は今まで私が支払ってきましたが、月々の負担が大きいので母の預金を解約して支払いにあてようと母の取引銀行の担当者と先日面談しました。母の様子を詳しく伝えた上で解約を申し出たところ担当者は「今の状態では申し訳ないが解約には応じられない」と言うばかりでした。
母のお金を母のために使うと言っているのに解約できないとは納得がいきません。そもそも私は他人ではなく息子です(戸籍謄本を持参して証明しました)。すべて母のために動いているのに、はっきり言って銀行に嫌がらせをされているような気持ちです。銀行の言っていることは本当なのですか。このような銀行にはどのように対処したらよいのでしょうか。

まず結論です。銀行の回答は正しい。
銀行預金の解約ができるのは預金者本人だけです。それは当たり前の話で、そもそも銀行と契約(お金を預けるのも利息が支払われるのも引き出そうと思えばできるのも契約によります)しているのがその人本人だからです。

そして契約には、当事者の判断能力も含めた意思の存在が必要です。もしも判断能力が欠けているとするとそこにはパーフェクトな意思はありません。このような場合、その意思表示は無効と評価されます。それが法的な考え方です。

本人であるお母様は判断能力に問題がある以上、パーフェクトな意思表示ができません。したがって解約もできないのです。

息子だから娘だからといって、お母様のかわりに解約をすることはできません。なぜなら、他人にかわって意思表示ができるのはその他人から代理権を授与されたときか、あるいは法(裁判所)が特別に認めたときだけだからです。

したがって、お母様の預金については、現状ではお母様本人も息子であるあなたもともに解約することができません。解約できるのは成年後見人だけです。

このケースでは、預金の解約を望むのであれば成年後見人の選任(後見開始申立)の手続一択ですね。

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